超巨大ブラックホールと活動銀河核

超巨大ブラックホールと活動銀河核

私たちの太陽系がある天の川銀河を含め、多くの銀河の中心には、太陽の100万倍から10億倍以上もの質量を持った超大質量ブラックホールがあることが観測から示唆されています。超大質量ブラックホールの周りのガスやダストは回転しながら超大質量ブラックホールへと落ち込んでいく際に、円盤を形成します。超大質量ブラックホールの中には、磁場などから生じる粘性による摩擦のエネルギーによって、円盤が非常に強く光り輝き出すものが存在します。また、強力な電波ジェットを噴出しているものも存在します。これらのように、膨大なエネルギーで光り輝く、超大質量ブラックホールを中心とする系を活動銀河核といいます。私たちのグループの目標は、超大質量ブラックホールの宇宙論的な進化と、超大質量ブラックホールと銀河との共進化の背後に隠されている物理について明らかにすることです。そのために、宇宙のさまざまな時代における、様々な活動銀河核に対して大規模な探査を行っています。

HSC-SSP Wideレイヤーは、その探査領域の広さ(およそ1400平方度)と素晴らしい感度(26等級まで観測可能)により、赤方偏移z=7(地球からの距離にして約130億光年)より遠くの宇宙まで、今まで発見されてきたものよりも暗い、新たなクェーサー(活動銀河核のうち特に明るく輝くもの)を次々と発見します。そして、宇宙の各時代において、どの程度の明るさのクェーサーが、どれほど存在するのか、幅広い明るさにわたって調べます(図1)。

分光での追観測により、初期のデータから発見された候補天体が、確かに赤方偏移z=6から7(地球からの距離128億光年〜130億光年)の宇宙に存在するクェーサーであるということが確かめられています(図2)。

HSC-SSPサーベイのユニークな特長の1つは、同じ観測領域を、HSC-SSP Deepレイヤー(およそ28平方度)を約5年間何度も観測するということです。活動銀河核はその明るさが時間によって変化していきます。所属する銀河よりずっと暗い活動銀河核でも、その明るさの時間変化を追うことで、検出することができるのです。この時間変動を通して、超大質量ブラックホールと銀河との共進化について調べることができます(図3)。

HSC-SSPサーベイのWideレイヤーとDeepレイヤーに対する可視光撮像観測はそれだけでも非常に強力な研究の武器ですが、これらの観測データと他の波長(X線、赤外線、電波)での観測結果とを組み合わせることで、可視光の観測のみでは発見できない様々な興味深い活動銀河核を調べることができます(図4)。

1.このグラフはクェーサーの観測から得られると予想される4つの赤方偏移での光度関数(どの程度の明るさのクェーサーが、どれほど存在するのかを表したもの)を表したものです。横軸は等級(左に行くほど暗い)を表し、縦軸は各等級でのクェーサーの個数密度を示します。黒丸と白丸はそれぞれ、HSC-SSP WideDeepレイヤーに対応しています。  また、縦に入っている点線は赤方偏移z47での活動銀河核の特徴的な光度を表し、斜めの点線はスローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)という非常に大規模なサーベイ観測の観測限界を表しています。SDSSでは、クェーサーの特徴的な光度より明るい範囲でしか観測ができていませんでした。HSC-SSPサーベイでは、特徴的光度よりもずっと暗いクェーサーまで探査することで、光度関数をより正確に求めていきます。

2.私たちは、すばる望遠鏡とカナリア大望遠鏡を用いて多数のクェーサー候補天体を分光観測することで、それらが、確かに赤方偏移(図1脚注参照)が6以上のクェーサーであることを確認してきました。この図は、分光観測で得られた実際のクェーサーのスペクトル(各波長での光の強さを表したもの)です。これらHSC-SSPサーベイで新たに見つかったクェーサーは、今までの広領域探査で見つかっていたものよりも2等級程度暗いものです。

3HSC-SSPサーベイでは同じ天域を複数回にわたって観測することにより、暗い活動銀河核を発見することができます。この画像は時間変動の観測で見つかった赤方偏移 z=2.15 の活動銀河核の例で、1辺が20秒角(1秒角は1度の3600分の1)の領域を写しています。左と中心の画像が異なる時間での観測結果で、右の画像がその差を描いたものです。周りの天体は時間変動がないために取り除かれ、時間変動のある活動銀河核だけが浮かび上がっています。

図4.私たちは、銀河中心にある超大質量ブラックホールが塵に覆い隠されているような銀河を発見しました。この画像は観測結果の例で、各画像の視野は20秒角です (1秒角は1度の3600分の1)。左がHSCで観測した可視光線の画像、中央がESOの広域近赤外線探査計画(バイキング)で得られた近赤外線での画像、右がNASAの赤外線天文衛星(ワイズ)で観測した中間赤外線での画像を示しています。このような塵に覆われた銀河は、中心に存在する超大質量ブラックホールからの放射を周囲の塵が吸収・散乱してしまうため、可視光線では非常に暗い一方で、吸収したエネルギーを塵が赤外線で再放射するため、赤外線では明るいという特徴があります。また、このような塵に覆われた銀河の中に潜むブラックホールは、今まさに急成長しているような「成長期ブラックホール」であることが期待されており、宇宙の歴史の中で銀河と超大質量ブラックホールがどのように影響を及ぼし合いながら成長してきたのか、その謎を探る上で重要な天体だと考えられています。HSCにバイキングやワイズなどの赤外線データを併用することにより、従来の探査では見逃されてきた、このような塵に覆われた銀河を多数発見することができると共に、その統計的な性質を知ることができます。

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