マルチバンド解析の詳細

multiBandDriver.py では coaddDriver.py によって作成された天体検出ファイルを用いて多色カタログを作成します (図1)。ここでは、multiBandDriver.py における処理を解析のプロセス毎に紹介します。

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図1 multiBandDriver.py における処理過程

1. 各 filter で検出された天体カタログを集める(merge)

coaddDriver.py では各 filter 毎に天体の検出カタログ( det-[filter]-[tract]-[patch].fits )が生成されます。multiBandDriver.py における最初のプロセスでは全ての filter のカタログファイルを集め、新たなカタログファイル( mergeDet-[tract]-[patch].fits )を作ります。

mergeDet カタログでは以下の優先順位に従って天体リストが更新されます。

  1. multiBandDriver.py で参照している filter で検出された天体を選択する
  2. 参照 filter の footprint 内のピークと 0.3” 以内にある天体は同じ天体とみなし、1” 以上離れている場合は新規の天体とみなす
  3. 1 番目の参照 filter では非検出で 2 番目の参照 filter でのみ検出された天体を選択する
  4. 2 番目の参照 filter の footprint 内のピークと 0.3” 以内にある天体は同じ天体とみなし、1” 以上離れている場合は新規の天体とみなす
  5. 1 番目の参照 filter では非検出で 3 番目の参照 filter でのみ検出された天体を選択する

例えば、図2 のような footprint とピークが各 filter で検出されていたとします。各 filter では (g: r: i) = (1,2,3: 1,2,3,4: 1,2,3,4) という天体が検出され det カタログに登録されています。 参照 filter の順番は、i-, g-, r-band とし、この 3 つの det カタログから上記の優先順位に従って mergeDet カタログを作成する場合を考えてみましょう。mergeDet カタログにはまず 1 番目の参照 filter i-band で検出された全天体が含まれます(i-band 1,2,3,4)。 この時、i-band objects とピーク位置が 0.3” 以内にいる天体は同じ天体と見なされるため mergeDet カタログには登録されません。図2 の場合では、i-band 1 と g-band 1、 i-band 2 と g-band 2, r-band 1、i-band 4 と r-band 3 は同じ天体と見なされます。次に 2 番目の参照 filter g-band でのみ検出された天体(g-band 3)が追加されます。ここで g-band 3 は r-band 2 と同じ天体と見なされます。そして最後に 3 番目の参照 filter のみで検出された天体 (r-band 4)が追加されます。最終的な mergeDet カタログには、i-band 1, 2, 3, 4, g-band 3, r-band 4 の天体とその測光パラメーターが含まれます。

また、mergeDet カタログでは各 filter で検出された footprint も集められます。 mergeDet カタログにおける footprint は、全ての filter の footprint を足し合わせた( merge された)ものとなります。図2 の例では、各 filter で検出された footprint(緑、赤、紫色の枠)を merge した footprint を灰色点線で示しています(※ 見やすさのために、わざと少し大きめに描かれています)。

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図2 各 filter で検出された footprint とピークの関係(例)

2. mergeDet カタログを使った天体測光と位置決め(meas)

次のプロセスでは、mergeDet カタログの天体の位置情報を用いて、再度天体の測光を行います。 ここでの測光は filter 毎に独立して行われます。 この時に各 filter で生成されるファイルは meas-[filter]-[tract]-[patch].fits です。

3. meas カタログを集めて大きな天体カタログを構築する(ref)

3 番目のプロセスは、各 filter の meas カタログを集め、最終的な ref-[tract]-[patch].fits、つまり、 reference band を決めます。 このプロセスでは、まず始めに、各天体毎に mergeDet カタログを作成する際に用いられた参照 filter の meas カタログ内の結果を集めます。 そして、mergeDet カタログを作成した際の filter の priority を使い、meas の結果からその天体における reference band を決定します。 こうして集められた天体リストをカタログとしてまとめたものが ref カタログとなります。

4. 各 filter 毎に最終 multiband カタログを生成する(forced_src)

multiBandDriver.py における最後のプロセスは、ref カタログのパラメーター情報をもとに、 各 filter 毎に最終カタログを構築することです( forced_src-[filter]-[tract]-[patch].fits )。 ここでは ref カタログの天体の位置と形状が全 filter において適用されます。 1 番目の参照 filter の meas カタログのパラメーターが ref カタログ生成時に大きく変更されないとすると、1 番目の参照 filter の meas カタログと forced_src カタログの測光結果はほぼ同じになります。


mergeDet カタログの中身と filter priority について

mergeDet のカタログの天体のパラメーターは、参照 filter を指定する順番で大きく変わります。 例えば、参照 filter の順番を r-, g-, i-band とします。すると mergeDet カタログには r-band 1, 2, 3, 4, g-band 1, i-band 3 という天体とその測光パラメーターが記載されます。 同様に、参照 filter の順番を g-, i-, r-band とした場合の mergeDet カタログ内の天体は、 g-band 1, 2, 3, i-band 3, 4, r-band 4 となります。